DRUMMING//蝸牛の恍惚

稀有な、音楽的体験。

冬の夜は早い。夜道をバスは渋谷を抜けて東京オペラ・シティへ、クロークにコートを預け、はやばやと会場いり。3階サイドのごく前方の、ステージを真上から見下ろす席。週も開けて間もない、仕事を終えて駆けつける人が多いのだろうか、まだ席はまばらに人が散らばるだけ、年齢層は若いのや白髪の女性などから、徐々に席が埋まり始めると層が厚いのは同年代か...。ステージに並ぶマリンバやドラム、すこし身を乗り出せば、ゲスト出演のスティーブ・ライヒ氏もおがめなくはなさそう。開演の時刻にはほぼ席は埋まった。
拍手...トレードマークの帽子と、もうひとりの男が肩を組んで登場、拍手は止み、
1曲目のクラッピング・ミュージック(1972)
手を叩く二人のリズムが奏でる二本のリズム、並び、並走し、接近し、交わりそしてまた、並奏される音楽。
2曲目、ナゴヤマリンバ(1994)
マリンバの音には高揚がある、リズムが奏でるうたがある。
3曲目、マレット楽器、声とオルガンのための音楽(1973)
曲の構成、変化する瞬間を掴まえ(られ)る快感。
ここまでで40分。20分の休憩を挟み後半は55分間休みなしのDRUMMINGが待っている。席を立って下に下りてもいいけれど今日は上から眺めていよう。何か物販を買う人、飲み物を飲む人、アイスクリームを食べながらお父さんのほうに走って行く小さな外国人の女の子、知人友人を見つける人も。
4曲目ドラミング[全曲](1970-71)
ミニマルミュージックの醍醐味を聴く。音楽は、全身で覚える聴覚的体験だ。聴覚はある極みで視覚と変わらない光を聴きとる。視えないものが視えるものに届こうとする瞬間。
素晴らしい演奏がなり止むと、何かを迎えるような拍手、コリン・カリー・グループの演奏をライヒ氏は後方の客席で聴いていたらしい。ステージに上り、スタンディング・オベーション、なり止まぬ拍手...
はぁ...よかった。
https://www.operacity.jp/concert/calendar/details/121204.php