冬の旅

クリスマスは宗教行事なのですが、クリスマス・シーズンにイタリアなどを訪れると、当然のことながらそれを身をもって知ることとなる。
旅行の目的は絵画、美術館というよりは教会の壁画等、決してそこを動くことがないものをこの目で、という欲望とともにミラノやシエナ、アレッツォなど。
シエナを訪れたのもクリスマス・シーズンだった。夜のドライブ、迷路のような街、ようやくたどり着いたホテル。暗い夜の石畳の黒い耀き。暗闇にクリマスの飾りつけがぼんやりと灯る。
古めかしいホテルの部屋の高い天井。大きな扉の衣装箪笥に子供たちへのプレゼントをそっと隠した。
朝がきてはじめてその景色を見る。裏庭に面したサンルームでの朝食は熱い珈琲、銀の皿に並んだハム、チーズ、卵、ヨーグルト、シリアル。ドアから裏庭に出る。冷たい空気、白い息、錆びた鉄柵に絡まった蔦、枯れた花。家屋の壁の色はチーズに似ている。朝は白い霧に包まれている。
表玄関から出て石畳をのぼりカンポ広場へ。まずは小さい男子を塔に登らせてから。(続)