Halloween

ハロウィーンの季節、みたい。
渡英し、9月の新学期から子供たちは学校に通い始め、初めて招待を受けたのがクラス・メイト宅でのハロウィーン・パーティーだった。招待状にはドレス・アップしてきてね、と書いてある。ドレス・アップというとお洒落をすることかと思ってしまう。子供に英語を教えて頂いていた先生に返事の書き方などを教えて頂いた。ドレス・アップもハロウィーンの仮装をすることだと。
Toy Shopには様々な仮装道具が所狭しと並んでいる。おどろおどろしい被り物、骸骨や幽霊、魔女の帽子。まだまだ奇抜な仮装など及びもつかない娘は猫の耳をつけて猫になることにした。黒い服の上下と尻尾も用意し、首には赤いリボンを結んで魔女のお供の黒猫という趣向。
招かれたお宅は教会の奥の煉瓦塀沿いの小路を延々と歩いた途上にある。10月30日の夜7時というと真夜中のように真っ暗で街灯などない。塀の上にぽつりと南瓜のランタンに火が灯されていたり、煉瓦塀は古びて湾曲し、暗闇の怖いこと、怖いこと。なるほどこれが本当のハロウィンかと納得しながら。
漸くクラス・メイトの話す英語も聞き取れるようにはなっていたとはいえ、まだまだ受け答えはままならない。ある男子に「何で猫?」と聞かれ、猫の格好はおかしいのかと気が気ではなかったようだ。
翌年に息子も友人宅でのハロウィーン・パーティーに招かれたが、その時は幽霊のお面に黒のマントを羽織って出かけた。まだ明るい時刻の集合だったのと、開放的なお宅だったこともあり、初めてのハロウィンの怖さは味わわずに済んだ。思い思いの仮装に身を包んだ少年達は興奮気味に追いかけ回っていた。
それでもやはり、ハロウィーンは暗闇を畏れる私たちの、暗闇に紛れる魂を畏れる行事だと思っている。亡霊に姿を変えた子供達は代わりにお菓子をもらうのだ。