折形

折る、結ぶ、畳む、は日本の型。
数年前、どうしても自分で着物が着たくなり、着付けのお稽古に半年通いました。着物を着るという行為に込められた意味を知ると、私たちはいったい何を失ったのだろうとまことに不安な心持になったものです。
一反の反物からつくられる着物。一針一針で縫われた着物は折る、畳む、結ぶことで身体を包む。
色の名前、季節感。柄を呼ぶ名前、言葉の意味、形。着物はそれだけですべて言い尽くすこともできるほど豊穣な言語となりうる。柄に和歌を偲ばせる、あるいは忍ばせることも可能ならば、洒落で掛けてお洒落にほのめかすことも。
着物が日常であった時代、言葉はもっと自在なものだったかもしれません。意味や形、色、季節、言葉が重層的に響くような。連想が連想を呼び、その仄かな交感のうちに満足を得るような。
いまでは着物を着るということ自体が遊びと化したような時代となってしまいましたが、時には着物を着て何かを思い出してみたいものです。
お正月のお年玉を包むのに、ここ数年は和紙を折ってお札(ほんのすこし)を包んでいます。おせちをいただくお箸を包む箸包みもいっしょに。

生活を楽しむ7 半紙で折る折形歳時記 (別冊太陽―生活をたのしむ)

生活を楽しむ7 半紙で折る折形歳時記 (別冊太陽―生活をたのしむ)