骨折骨折四十肩打撲捻挫その他骨折

いきつけの整形外科の先生をお見掛けした。寿司屋かおそば屋で昼食をとったところなのだろう、うつむきかげんでそろりと歩く。診察室ではお世話になるが「先生こんにちは」と親しげにお声を掛ける間柄でもない。
娘が小学校2年生のとき、マンション前の道路でオートバイと接触し骨折した。腕にひびが入り、ギプスをはめるほどの重症ではなかったが毎朝晩に湿布を替え包帯を巻く。朝はひとりで学校に行ったが帰りは校門まで迎えに行った。息子は幼稚園児で動き盛りだった。学校から3人での帰路、坂道を下る。息子は駆け出してくるくる回る。「○○くん、転ぶよ」瞬間、彼は転んだ。(折れたな)と直感したわたしは息子に追いつくと「だから言ったじゃない」泣きだしそうだった。息子は当然「大丈夫?」と言ってもらえると思ったらしく驚いていた。診察を受けるとやはり鎖骨にひびが入っていた。こちらもギプスをはめるほどではなく固定具をつけるだけで済んだ。それぞれ完治に1ヶ月強ほどかかったが2週間は重なっていたため1ヵ月半は医院に通った。
息子が完治して2週間ほどたったころだったろうか。夫は出張で家にいなかった。朝起きようとすると肩、というか背中が激痛で起きることができない。たぶん土曜日だったのだろう、子供達を送り出す必要のない日だった。何とか起きてどうにか着替えをし、子供達を連れていつもの整形外科医院に。先生は「どうしたの?」と驚いた。レントゲンを撮るときに看護婦さんが肩をほんのちょっと動かしたとき、激痛で涙がこぼれた。先生はいいにくそうに「四十肩とか五十肩といわれるものですね。軟骨が炎症を起こしています」と。私はまだ30代前半だった。お薬を飲むと痛みは引き、ほどなく治った。
翌年には渡英し、その間整形外科にお世話になることはなかった。帰国したとき娘は中1。夏休み明けの体育の時間に足を捻って腫らした、捻挫。息子は友達と遊んでいて、打撲。昨年は部活で足の指つけ根骨折。またギプスを付けるほどではなく、松葉杖をつくこともないので「骨折の雰囲気だせなかった」と逆に残念そう。骨折していなければ良かったね、骨折していればああやっぱりね、だんだん慣れてくる。誰も入院するほどの怪我や病気をしていないのは幸いかもしれない。
「おにいちゃん、どうだい、具合は?」と優しく話す先生、三國連太郎似のおっとりとした様子は父を想いだす。