鳥の通り道

窓の外が小さな梅園のような感じになっており、白い花を咲かせては目を愉しませてくれている。メジロシジュウカラヒヨドリなどが蜜を求めて訪れるのでこれもまた愉しい。
イギリスで2つめに住んだ住まいは3棟が中庭を囲む形の集合住宅だった。1つめの住まいが伝統的な造りのため幾分使いづらい部分もあり転居したのだったが、2つめのフラットは現代的な造りで利便性はあるが、いつか音のことで書いたように味わいに幾分欠けるものだった。
どういうわけかどちらの住まいにもキツネが棲みついていたのは不思議な共通点かもしれない。
中庭は全ての住居から見下ろすことができ、それぞれの住まいに入るときにもそこを通る造りになっていた。中央に噴水がある。噴水の周りをベンチが幾つか取り囲んでいた。放射状に各入り口に通路が敷かれる。桜の木が植えられ、春には白と薄桃色の花を咲かせて日本を思い出させてくれる。
学校への送り迎えや外出するとき幾度もそこを通るが、その小さな庭の気配、ことに人が居ない「時」の気配を、感じることがあった。
子供の手を引いて中庭に足を踏み入れた瞬間に、桜の木に止まっていた鳥がいつも同じ方向に飛んでいく。わたしたちが入る入り口と隣の棟との間の人ひとり通れる間をすうっと通っていく。中庭と裏庭を繋ぐ鳥の通り道を見るようだ。お喋りな小鳥達、ひがないちにち仲の良い仲間とお喋りをしたり競争したり誰かを呼んでいたり...そこにわたしたち人間が足を踏み入れる。邪魔者なのだな、と思う。
逃げもせず、朱い可愛いおなかをみせてちっちと鳴いてみせるのはコマドリRobin。細い足で梢に止まり、人間が気づかずに通ろうとすると小さな声でちっちと鳴いて知らせる。
日本で見掛けることのないカササギはカラスの仲間。同じくカラスの仲間のオナガを小さめのカラス大にしたような。黒と白に塗り分けた肢体、羽を広げると青、緑にかがやく部分がある。その性格はリスのナトキン(ピーターラビットシリーズ)が尻尾をふくろうのじいさまに食いちぎられてお薬を所望するカササギ先生そのもののような、すっとぼけた性格。ぴょん、ぴょんと人の前で跳んでみせるところなど、莫迦にしているのではないかと思う。
太い太いもさもさの尻尾をぴんと立てて堂々と歩く黒猫も棲みついていた。人間が通るとゆっくりと尻尾を立てて歩み去る姿。
キツネ。目が会うと外さない。さっさっさっと走りながらアイコンタクトを図る。こちらも負けじと眼力を(笑)、喧嘩にならないくらいの。
日曜日の山鳩様たち。食べるやら齧るやら走る登る落ちることもあるリスたち。まるで動物園に暮らすような、
キツネに騙されたお話はいづれまた。