『あるきだした小さな木』

子どもの頃に何度も読んだ『あるきだした小さな木』。
絵もお話も好きで何度も読んだ。

あるきだした小さな木 (世界のカラー童話)

あるきだした小さな木 (世界のカラー童話)

書き出しはこう、

かい ふかい 森のなかに、
お日さまが きらきら ひかる、小さな はらっぱが ありました。
そこに ちびっこの木が 一本 はえていました。
せいの 高さは、
パパの木 ママの木の はんぶんぐらいしか ありません。
かおをあげてみると、パパの木 ママの木は、
空のなかで こずえをゆらゆら ゆらしています。
「パパ、パパは お日さまにとどくほど せいが高いの?」
と、ちびっこの木は たずねました。
ちびっこの木は とてもしあわせでした。
パパとママの すぐそばにはえているなんて、
とても いいでしょ!

あいだはこう、

でも ほんとうに
木は あるけないかしら。
それは いままで、
ためしに あるこうとした 木が、
一本も なかったからです。

おわりはこう、

やがて ちびっこの木は、
えだえだに 花を つけました。
ちびっこの木は、空に むかって、ずんずん のびて、
とうとう パパの木よりも、
ママの木よりも 高くなって、
じぶんでも びっくりするほどに 大きくなりました。
わたり鳥たちが ちびっこの木の えだに
やすみに きました。
鳥たちは、ながく ながく とんで つかれていたのです。
鳥たちは、ちびっこの木の えだで
うれしそうに さえずりました。

かぜが ひとふき さばくを わたってきて、
ちびっこの木の はっぱを とおりぬけます。
すると、はっぱが ゆれて、
うつくしい おんがくに なるのでした。
ああ、そうだ!
もう、ちびっこの木では ありません。
それは もう、
大きな おとなの 木なんです。
                           おわり

作者はロンドン生まれパリ育ちのテルマ・ボルクマン。
あとがきはこう、

わたしは《ちびっこの木》が日本まであるいていったことを、とてもうれしく思っています。いままでわたしは、日本のことをあまりしらなかったからです。
(中略)
でも、まだわからないことがいっぱいあるのです。
わたしたちだって、日本にはせかい一はやい電車ががしっていることも知っていますし、まい日とてもべんりな日本のものもつかっています。また、日本にはえらい学者やけんきゅうかがおおぜいいることも知っています。
それでもやっぱり、わたしたちには、日本がとてもふしぎなうつくしい国に、思えるのです。わたしたちはみなさんの国にいつまでもあこがれていたいのです。
わたしたちはみなさんのママがキモノをきて、いけ花をしているところをゆめにみるんです。
そして、このうつくしいゆめをなくしたくないのです。
日本の子どものみなさん。いまも、そして大きくなってからも、日本のうつくしいものをしっかりまもってください。しぜんをだいじにする心を、ゆうきを、人のいのちをとうとぶ心を、しっかりもってください。

遠い異国の地から日本を眺めたとき、ふしぎな、うつくしいものをもつ日本の行方が、<とてもべんりなほう>に向かおうとしているのが見えたのだろうか。
このあとがきは、日本に向けた警鐘に見える。