もりのなか

白金台で娘と待ち合わせをして目黒方向へ。
庭園美術館とセットで訪れたかった自然教育園に行くのにちょうど良い回り道。庭園美術館と縦走コースにしようと思ったのに、いまは何の展示だろうとチェックすると改装のため11月1日から長期閉館に入っていることを知る。先月、ふと思い立って行こうとして乗換駅を逃してしまい、行く先を変えてしまったのが少しばかり悔やまれる。建物の改装の後、庭園の改修をするらしく、数年間に亘り閉館となるらしい。いずれにしても都心にのこる数少ない遺産なのだから大切に保存されるのはよろこばしい。
というわけで森へ。

高校生は無料、大人料金300円の切符を券売機で買うと隣のガラス窓からピンク色のリボン二つが差し出される。その隣にはリボン返却のためのスリットもある。各自リボンを安全ピンで留め、園内へ。
鬱蒼とした森(と呼んでも差し支えないだろう)、武蔵野の原生林をいまに伝える切り取られた森。高く聳える木々が明るい陽射しを遮り、空気はひんやりと冷たい。樹の間を抜ける陽射しはことのほか輝いて見える。大勢の烏の呼び交わす声ばかりが騒がしい。分かれ道に立看板、ひょうたん池のほうへ進路をとる。明るい木立にさしかかると小鳥達のお喋りも聞こえてくる。分かれ道に立看板、右へ行くと更に森が続くようだが今回はあまり奥へ侵入しないように池のあるほうへ。お出かけや旅行に殆ど写真を撮らない方針できたのに、アイフォンが手軽なのでつい下手な写真を撮ってしまう。池の水面が木立の奥に光って見えてきた。開けた景色、淀んだ水面に同心円を描く波紋、アメンボ。アザミの紫の花、ぎざぎざの葉、綿毛もつけている。池をススキの垂れた穂が縁取っている。木のベンチに腰掛けて三時のおやつは小さな源氏パイとマリービスケット、林檎ジュース。道路を走る自動車のエンジン音、交差する線路を刻む電車の音、プロペラの回転音が外の世界から聞こえてくる。喧騒に囲まれた都心の森に陽が傾きかける、冷えてきたので移動しましょうか。
忽然と姿を現した水鳥の沼の奥行きにみとれる。いつからともなく止まったような水の存在感に暫し時を忘れる。水鳥はいない。

いろはもみじもまだ青青とした葉をつけている。都心の秋は遅い。はじめに分かれた分岐点に帰ってきた、出口まであと僅か。種々の木々に記された植物の名前の面白いこと、イヌショウマ、サルトリイバラ、キツネノマゴ科、ホトトギス
四時に出ると正門がちょうど閉まる時刻、ピンクのリボンをスリットに滑らせる。出口の看板は正門の逆向きを差す。すこしだけ回り道をさせられる出口。「どっちに行くの?」「あっちに行くの。」後ろを指差す。隣接する庭園美術館の正門の金属の扉が半分閉じている。あ、銀色の栞の模様。
目黒駅からJRで渋谷へ向かう。アップルショップで娘の不調のアイフォンを新品交換へ。