よみきかせのはじまり「せいめいのれきし」

よみきかせはここからはじまった。夫も子供だったころの、黒のクロス貼りの
バージニア・リー・バートン:文・え、いしいももこ:やく

せいめいのれきし―地球上にせいめいがうまれたときからいままでのおはなし (大型絵本)

せいめいのれきし―地球上にせいめいがうまれたときからいままでのおはなし (大型絵本)

娘にこれを何度読んできかせたことか。もう、数え切れないほど。毎日、毎日、飽きもせず、くりかえし、くりかえし、読んできかせた。もう十数年前のことになる。
今、久しぶりにパラパラとめくってみても、やはり大変な名作である。
そして、娘の好みがここに既にあったんだな、と感じられて、おかしい。ちゃんと理解したい、という子供の欲求に十全にこたえられる物語のはこびになっている。理系の内容を、文系の語りで伝える、物語が進むにつれて「ちいさいおうち」に繋がる、現在に繋がるつくりになっていて、壮大な内容の絵本。
1ページが「プロローグ1ば」「3まく5ば」などと舞台仕立てになっているのもしゃれている。
そしてやはり挿絵が素晴らしい!リアルすぎず、かつ本当らしい。その場面が315,000,000ねんまえなど、想像できないほど昔のことでも、「こんな世界だったんだ」と信じられるような描き方。
娘はひらがな、カタカナの読みはこの絵本で覚えてしまった。「ふういんぼく」「りんぼく」「とくさのせんぞ」などと指差す幼かった娘の声を思い出す。「セームリア」「イクチオサウル」「アロサウルス」「パラサウロロフス」「アーケロン」そんな、日常では使わない、はるか昔に生きていたらしいいきものの名を呼ぶのが楽しかったようだ。言葉をたくさん覚える年頃の子供の、「しってるよ」と親に誇示する気持ちも、もちろんある。恐竜の絵も恐すぎず、女の子にもちょうどいい。マンモスの時代の寒そうな氷河の表現もかえってリアルに感じられる。
そして、人間があらわれる。「ああ、この時代ならしっている」。旅行から帰ってくるときのような、日常に戻る、ちょっとがっかりする気分に少し似ている。
ここに建てられる「おうち」は、私たちが子供だったころ、そして娘も幼かったころに繰り返し、繰り返し描いた「おうち」。「おうち」の前にお庭があって、お花が咲いていて、木が植わっている、窓にはカーテンがかかっていて、えんとつからはけむりが出ている。「いつか、こんなおうちにすむの」
四季はめぐり、朝がくれば、太陽がのぼる。