詩のある小説 フローベール

好きな小説を3つ挙げるならフローベール感情教育』メリメ『カルメンラファイエット夫人クレーヴの奥方』を挙げますが

西脇順三郎氏いわく

小説はフローベルが一番好きであった。フローベルを読んでから詩に対する興味を大部分失くした。それほどフローベルの藝術に感心してしまった。それから詩を書くときでもフローベルの自然主義とそのテクニークを出すことに興味を覚えた。

とある。
フローベールというと『ボヴァリー夫人』の自然主義、で終わってしまいがちなのが残念である。
ボヴァリー夫人』と『感情教育』は対の作品であり、二つの極を描いたものといえましょう。はじめに『ボヴァリー夫人』を読んだ時、これほど巧みに悪いものを描くとは、と感嘆とともに怒りをすら感じ、『感情教育』を読んだのでしたが。そこにはエンマの対極となる女性像と、それをひたすらに願いながら(そのねがいそのものが詩となる。夢ともいう)同時に現実を生きる主人公が描かれていた。同じく非常に巧みな描写で。

感情教育〈上〉 (岩波文庫)

感情教育〈上〉 (岩波文庫)

感情教育〈下〉 (岩波文庫)

感情教育〈下〉 (岩波文庫)

私は「ボヴァリー夫人」を映画で観たくないが、「感情教育」をみてみたい。それは極めて巧みに撮られなければならない。(ヴィスコンティにお願いしたかった)