いとも豪華なる装置 京都

銀閣寺の二階室内は総漆塗りとのこと。漆黒の重い輝き。くりぬかれた窓が切り取るもみじの錦...
この夏の想い出は暑い暑い京都旅。おもいかえせば暑さはすっかりとりのぞかれ、うつくしい緑と銀砂の庭に置かれた銀閣の姿、杮葺きの屋根は陽を照り返していた、白い百日紅は花穂を揺らしていた。銀閣は見られていた。
見られるものである銀閣の眼が切り取る景色を見てみたい、漆黒の内側から。月がのぼるのを、夜が明けるのを、陽が沈むのを、春のざわめきを、夏のもゆる緑を、色なすもみじを、ふりつもる白銀を。
四方を山で囲んだ京都という装置はいまもなお其処彼処で働きをやめないらしい。型通りに動くこと。時を告げる祭り、あるべきときに、あるべきところで、あるべきように。かたちと言葉は互いに補いあい、意味を包んだ。