色彩で描かれた 音によく似た光

丸の内は三菱一号館美術館で「カンディンスキー青騎士展」を観てきたので、感想をひとこと。
カンディンスキーのめくるめくようなスタイルの変遷がみてとれる。ごく初期から構想に優れ、《シュヴァービング、ニコライ広場》の舞台のような構成、《花嫁》の、正面に座る、民族衣装に身を包んだ花嫁の横顔、広がるドレスのかたちに遠景に運ぶ風景のなかの物語。そこに描かれた風景はそこにあり、調和を示しているように見えた。カンディンスキーはそこに留まることを望まないかのように変化を求めていく。
ガブリエーレ・ミュンターとの出会い、ムルナウという小さな村の「発見」。それらを機に「飛躍」とでもいうべき変化を遂げていく。特にムルナウを描く色彩の横溢は...何故それほどまでに色彩を過剰に求めたのか。ドイツのごく南に位置する、湖畔の小さな村。そこが彼にとっての南国だったのだろうか。
そしてシェーンベルクの音楽との出逢い、《印象Ⅲコンサート》。カンディンスキーの抽象の鍵となる音との出逢い。音楽が与える直裁的な効果を色彩で描くこと。
当時の「青騎士展」のモノクロ写真が展示されている。カンディンスキーの作品にははっきりと光の塊が描かれているのがわかる。音楽によく似た。新しい音楽、新しい芸術、新しい表現。
カンディンスキーが至るコンポジションのうねるような、時計回りに巡る色彩による光の表現。画家は、音楽に憧れたのかもしれない。