ほんとうの色

日本の色名が好き。その色の本当らしさとその名前の本当らしさの距離が好きだと云ったらいいだろうか。そのものずばり、という色名もあれば、抽象的な色名、詩的な色名もある。自然由来の染料との関わりはそれぞれの染料の科学的側面との厳しい関係でもある…

Reunion

勅使河原三郎のダンスとの再会、タイトルは「リユニオン」。これはピアニスト、フランチェスコ・トリスターノと勅使河原三郎、伊東利穂子の南フランス(森の中の野外劇場で行われたという)でのコラボの再会の意味だそうだ。 http://eurassic.jp/reunion/#003 …

パウル・クレー

東京国立近代美術館クレー展の最終日 混雑。 じりじりと焦れるような行列に付かず遠目に見ながら間を縫っていく。 《花ひらいて》ランダムな四角で区切られた色の配列は色を、光を点滅させるように視える。花の意思、咲こうとする命の明滅。 アトリエの写真…

神神の相貌 「白洲正子展」

眩しすぎる春、桜散る前にと、砧公園内にある世田谷美術館で開催されている白洲正子展、盛況。年齢層は高め、男女比は半々といったところでしょうか。 http://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/exhibition.html 白洲氏の著作は主に海外滞在時に読み、…

溶ける魚

国立新美術館で開催されているシュルレアリスム展。 http://www.sur2011.jp/ルネ・マグリットの絵画は、これまでにも何度も観たはずで、その度に強い印象を受けながらずっとそのままにしてきたのは、その「夢」のイメージがあまりにも真を衝いているので、真…

小鳥と呼ばれた男 パオロ・ウッチェロ

時々わけもなく思い出す絵画は、ロンドンのナショナル・ギャラリーにあるパオロ・ウッチェロの《聖ゲオルギウスと竜》。そして《サン・ロマーノの戦い》。 遠近法に魅せられた画家として通っていますが、ほんとうにそうかしらと疑うような微笑ましい絵画を残…

下村観山という人

年末にドガ展を観るために横浜美術館に足を運んだのでしたが、時間がないままに感想をアップしてしまい中途半端なままですが。 横浜美術館は近代日本画のコレクションが結構並んでいるが、そのなかで下村観山の絵画に心惹かれる。 非常に均整のとれた、破綻…

ドガ

年の瀬の横浜美術館。年内で終わりのようなので慌ててドガ展へ。冒頭に掲げられた若き日の自画像。呆けたような表情をこちらに向ける。 生涯のテーマの踊り子を描き始めるまでの気のない絵画が並ぶ。ほんの一瞬の瞬間、虚けた瞬間、魂の抜けた瞬間を描こうと…

色彩で描かれた 音によく似た光

丸の内は三菱一号館美術館で「カンディンスキーと青騎士展」を観てきたので、感想をひとこと。 カンディンスキーのめくるめくようなスタイルの変遷がみてとれる。ごく初期から構想に優れ、《シュヴァービング、ニコライ広場》の舞台のような構成、《花嫁》の…

奥行の鳥瞰図

きのうの続き。 円山応挙の「淀川両岸図巻」という巻物も展示されていた。京都伏見から大阪京橋・大阪城に至る淀川が延々と描かれた巻物であり、一見したところただ一本の川が描かれているだけのようだが、見ると細かく描かれた両岸の建物が、上側はそのまま…

奥行きは奥へ奥へ 円山応挙

三井記念美術館の「円山応挙--空間の創造」展。奥行きの人。 20代の修行期の頃にはいわゆる「眼鏡絵」の制作に携わっていたことが知られる。この頃、京都四条通柳馬場の尾張屋中島勘兵衛という玩具商に勤めていた。そこでオランダ渡来の眼鏡絵を見て、宝暦9…

ファン・エイクからの無言

濃厚な記憶はファン・エイクの描く毛織物の、絨毯の、ビロウドの、シルクの襞の重々しい色艶。ガラスを通る光線。甲冑の金属の放つ光。絵画? ファン・エイクの絵を前にすると、何故?と問いたくなる。無言で。何が描かれ、何が描かれていないのか。圧倒され…

ナポリ考古学博物館 ポンペイ

ナポリでナポリ考古学博物館を訪れ、ソレントに2泊したあとポンペイに移動し、ポンペイ遺跡を見物した。 ポンペイの遺跡から発掘された数々のモザイクやフレスコ画はナポリの考古学博物館に納められているので、ポンペイを訪れるならこちらも併せて訪問すべ…

瞑想のとき

ピエロ・デッラ・フランチェスカは5本の指に入る大好きな画家 小雨降る日、観光客の姿もないアレッツォの街は静かだった。ピエロのフレスコ画《聖十字架伝説》を観るには丁度良い。予約の時刻に訪れると、他には1組のみ。音声ガイドを各自受け取り、こころゆ…

『カポディモンテ美術館展』その3

マンテーニャ《ルドヴィゴ(?)・ゴンザーガの肖像》1470頃小さな、横顔の肖像画 ゴンザーガ家、エステ家、モンテフェルトロ家などと聞くと血がざわざわと騒ぐ私ですが、どれも手付かずであまり良くわからないのは残念なこと。それらは愛するピサネロやピエロ…

『カポディモンテ美術館展』その2

グイド・レーニ《アタランテとヒッポメネス》1622年頃 古代神話の乙女アタランテは、その美貌と俊足、そして男嫌いで有名であった。求婚者は彼女を駆け比べで負かさねばならず、それができないと彼女に殺された。しかしヒッポメネスは彼女に抜かされそうにな…

『カポディモンテ美術館展』 国立西洋美術館

平日の閉館前の時刻ということもあり、たいへん空いていて、絵画と向き合うことができた。パルミジャニーノ《貴婦人の肖像(アンテア)》1535-37年 ヴァザーリは、パルミジャニーノの画才を讃えながら、錬金術のために時を無駄にしたことを残念に思っている。…

ヴェローナ ピサネロ(1395−1455?)

イタリアの街は何処も素晴らしいが、最も好きなのは・・ヴェローナかもしれない 「ロミオとジュリエット」の場所であり、夏にはローマ時代のアレーナでの野外オペラが名物だが、わたしたちが訪れたのはその時期ではない。オフシーズンといって良い時期だった…

『ピサネロ装飾論』 杉本秀太郎

杉本秀太郎氏は京都生まれのフランス文学者。京都最大規模の町屋建築である杉本家の当主である。 京都に生まれ、戦争を経験し、フランスに留学した氏が書き留めた『洛中生息』の色合いをどう表現したら良いだろう。うしなわれた時、変わりゆく街、京都を書き…

続Fortuna

前エントリーを補うものとしてひねもす様がフォルトゥーナについて素敵な解説をしてくださいました。 http://d.hatena.ne.jp/nisuseteuryalus2/20100613/1276431773 フォルトゥーナはローマ神話の運命の女神で・・ということは読んでいただければ解ることで…

美を希う画家 浅野信二画伯

画伯、と呼ばれるのを好まれるかどうか定かではありませんが・・ 「美」を「時」を「記憶」を描く画家、浅野信二氏は現在進行形の、私たちと同年代の、日本人の画家である。 2000年以降、それまで培って来た古典技法の研究を更に進め、下地や溶剤の工夫に加…

九曜紋 「細川家の至宝展」

余程ぼんやりしていたのでしょう。(いつから?) 昨日、雨の中、上野まで行ったのですが、「長谷川等伯展」を見るために。ここで?された方もいらっしゃるかもしれません。会期を確かめてみると、2月23日から3月22日と、極端に短い!3ヶ月くらい、やってるん…

光を発する絵画 ピサネロ

ロンドンNATIONAL GALLERYを訪れれば、必ず私の足を止めずにはいない小さな板絵《聖エウスタキスの見た幻影》を描いた人の名はピサネロPisanello(1395頃〜1455?)ピサネロの名は父親の生まれ故郷ピサに由来する。彼はジェンティーレ・ダ・ファブリアーノの弟…

ダ・ヴィンチの誕生日

今日はレオナルド・ダ・ヴィンチの誕生日。 1452年の4月15日に、フィレンツェ郊外のヴィンチ村で「愛から生まれた子」として生まれた。私生児として生まれたのだ。イギリスに住み始めて間もなく、NATIONAL GALLERYを訪れた。 名画の数々、ファン・アイクの「…

根津美術館

リニューアル後の根津美術館に行った。20年ぶり。http://www.nezu-muse.or.jp/同じ場所に、見知らぬ建物が建っている。エントランスは竹がモダンにあしらわれている。草月流風の、東京の、現代の和のかたち。以前はどんな建物だったか?もはや思い出せない…