美を希う画家 浅野信二画伯

画伯、と呼ばれるのを好まれるかどうか定かではありませんが・・
「美」を「時」を「記憶」を描く画家、浅野信二氏は現在進行形の、私たちと同年代の、日本人の画家である。

2000年以降、それまで培って来た古典技法の研究を更に進め、下地や溶剤の工夫に加え、全ての作品において使用する油絵の具を、自家製の「手練り油絵の具」としている。これは19世紀に崩壊する以前の、油絵が幾世紀もの時間をかけて完成させた技法の体系を復興させ、正しく受け継ごうとする意志による
<浅野信二作品の技法的特徴/2007 新宿小田急「浅野信二・掛川和彦二人展」より>

古典技法を用いて描くこと、その行為そのものが美を希う心に通ずる。

Fortuna 45.5x38.0cm 2007
こちらは私も大好きな作品。自画像的なるもの、としてもよいのでしょうか?
こちらを見据える不敵な視線は、翼の描かれていない大天使ミカエルのよう(とするのは私の勝手な解釈)

浅野信二氏の描く絵画に漂う、懐古、うしなわれた時、遠い記憶、そして「美」をこそ描きたいという強い希いに私はうたれる。

眠れる少女の重い瞼はどんな夢をみているのでしょう。
騒ぎだすような、迫りくるような森の静寂。
少女の腕に抱かれた人形はひとり記憶を辿る。



Trench Widow 16x27.3cm 2010
「とおくを想う絵画」と私は呼ぶ・・くすんだ、懐かしい色調はまるで遠い記憶のよう。

遺失物 15x22cm 2010
こちらが最新作。「遺失物」のタイトルは私たちが忘れかけたもの、掴み損ねたものを思わせる。
遠くを見つめる少女の「遺失物」はまだ形をなしてはいない・・
浅野信二画伯の公式HPはこちら

http://www.linkclub.or.jp/~asasin/AsasinSane/
こちらでは氏の仕事ぶり、アトリエの仲間たち、顔料の数々、筆の数々、そして詩人ぶりがうかがえます。

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