奥行の鳥瞰図

きのうの続き。
円山応挙の「淀川両岸図巻」という巻物も展示されていた。京都伏見から大阪京橋・大阪城に至る淀川が延々と描かれた巻物であり、一見したところただ一本の川が描かれているだけのようだが、見ると細かく描かれた両岸の建物が、上側はそのままでよいとして下側はご丁寧にこちら側に倒したかたちで描いている。つまり、鳥瞰図ではあるが、両岸の景色は船から眺めたままに描いたものらしい。
展示ではもちろん巻物を長々と繰り延べた形にしているが、巻物をくるくると開いていくのを想像すると面白い。船に乗り込み、京都から大阪までの小旅行が繰り広げられるわけだが、それは同時に奥行を奥へ奥へと運ぶ視線の旅でもある。建物は途切れ、山がちの景色には群れ飛ぶ鳥達も細密な点で描かれている。
川を行く旅はちょうど「収斂しながら、収斂しないレール」にも似て、見えないものを見せてくれる不思議な時間を描いたものかもしれない。(あの向こうに、何があるのだろう)