LONDON 二日目

案の定、変な時刻に目覚めてしまい夜を飛ぶ飛行機が鳴り止まないのでベッドから起き出して窓から外を覗く。向いの建物もホテルだろうか、ひと気のないレストランに居並ぶ白いテーブルクロスと椅子が厳かに照らされている。古風な街の丘の上を横切る飛行機は思いのほか間近を飛んで行った。
と、向いのホテルのレストランに、だしぬけに大男が脇から登場し、大窓の上部をガラガラと少しだけ下ろすと両手に持った割り箸様の棒を器用に操りガラスを磨きはじめた。ホテルで働く人の朝は早い夜明け前。やがて白々と夜が明けてくる、お化粧をして身なりを整えて娘を起こし、朝食も運ばれた。
青天、朝はすこし冷えるが気温は27度程度に上がるらしい。変わらぬテムズの景色を眺めながら坂を下りてゆく。ヘロンズ・スクエアを抜けて川沿いに下りてみましょう。
雛壇に並んだベンチ、ぶら下がる鮮やかなペチュニアのバスケット、川に浮かぶ舟舟船、たのしい川べ...
もうお店も開く時刻、ウォーターストーンズで娘は何冊か本を選ぶ、装丁が素敵であれもこれも欲しくなる。靴店で娘に履き心地の良いサンダルが見つかった。
ナショナル・レールでウォータールーへ、ベイカールー・ラインでオクスフォード・サーカスで降りオクスフォード・ストリートをぶらぶらしながらセルフリッジスの脇を奥に入り、ウォレス・コレクションへ。個人の邸宅、コレクションが美術館として開放されているものでこちらも入場無料。豪奢な調度に配された美術品、フラゴナールの「ぶらんこ」やブーシェを観るのに相応しい。グランド・ギャラリーにはティツィアーノの「ペルセウスアンドロメダ」もある。ベラスケスの「扇を持つ貴婦人」に目が留まる。

白い手袋に包まれた手の表情、黒いヴェールと茶の衣装に映える青いリボンの絹の光沢、眼の表情と肌の艶。ポーズする貴婦人のリアリズムが美しい。
ナショナル・ギャラリーや大英博物館などのいとも大きな美術館とはまた違った趣が良い。外に出ると、学生や近くのオフィスで働く若者の昼休みだろうか、前庭のちっぽけな芝生に思い思いに座りランチタイムを寛いでいる。
リージェンツ・パークでランチを広げたいからセルフリッジスでパニーニと飲み物を買い、バスで移動...バス停を探し当てるのに手間取る。広大なリージェンツ・パークの丸い薔薇園クイーン・メアリーズ・ガーデンズが目的地だけれど、お腹も空いたことだしこの辺で座って食べましょうか?

空は青く花壇の花は美しく蜜蜂は熱心に蜜をあつめ芝生は青青として人は憩い、ピクニック最高。
歩いてゆくと、ユニオン・ジャック・ユニオン・ジャック・ユニオン・ジャック...オリンピック、パラリンピックだし、綺麗ねー。

なおも歩いてゆくと...見えてきました、黒と金で塗られた鉄門を入ると丸く囲われた薔薇苑クイーン・メアリーズ・ガーデンズ。

夏も最後の輝き、薔薇の美しい時間も終りはじめようとする季節も庭の美しさに終りはない。
もう一箇所行くつもりではあったのだけれど...日はまだ高いが時刻は夕刻を指してくる。ナショナル・ギャラリーでもちょっと覗きましょうか?印象派をさらりと流して閉館の時刻。セインズベリー館の名画に後ろ髪ひかれながら地下鉄駅に向う。
夕食は地元で。タイ・エレファントかストラーダ...でもあまりお腹が空かないし、フィッシュ&チップスにしちゃう?街の古風な食堂然とした店内、クラウド・レモネードとコッドのフィッシュ&チップス、ビネガーと塩を振って気取らない夕食。
坂をのぼって陽が暮れて、ヒルから赤い夕焼けを見た。