パスカル・キニャール

この短い生涯で気づいたことは、死が過去に入り込むと、馬は前に進まなくなるということだ。だから畳んで、ハンカチーフ箱にしまったのだ。

辺境の館

辺境の館

花々の影が欄干にさしていますが、それはけっして花そのものではありません。花々は階段の下、花瓶におさまっております。男は、新大陸に向かうカラベル船のように、自分の欲望のなかに消えたのです。夢見るものが夢のなかに消えてしまうように。

けして長い小説ではない。細部が仔細に記述されるわけではない、のにも関わらず鮮やかな色彩はめくるめく、愛と、欲望と、復讐に関する物語は神話のように物語られる。庭がのこる。