2010-10-19から1日間の記事一覧

「お香とお能」 白洲正子

香木や火はありのままの自然のものですから目をあざむきません。そのままで信用できるのです。しかしお能の舞台における人々とても実際においてすこしも香木とや火と異なるものではありません。外観にあざむかれてもその事実が信用できないのは観客が悪いの…

「変質した優雅」 三島由紀夫

三島由紀夫による観世銕之丞演ずる「大原御幸」に寄せて。なかなかに凄まじい。 平家滅亡の直後、自らのみ波の間から救はれて、思ひがけず命を永らへ、大原の寂光院に世を捨ててをられる女院を、父法王が訪れ給ふ話である。そして法王は、娘に向つてかう言ふ…

舞ひいでたる狂女 きらびやかに舞ひ狂ふ女ひとり さても心をいれて狂へば 春の日に くさぐさの想ひぞ高まる 舞ひいでたる女ひとり さても心をいれて狂へば 顔のもちよう俯かず仰がず 袖のながきもの着て手先など見せず 弱々としめし帯 持ちさだめずして持ち…