鴨川に架かる月

夏の京都も悪くない。というのは、陽も落ちて、藍染の浴衣に着替えて仄暗い灯篭の道をそぞろ歩くとき、時代も自分も人も解らなくなる。境界がわからなくなり、まるで冥界をそぞろ歩いているような気分に。
鴨川に架かる橋の上で月を眺める。これはきっと和泉式部が、式子内親王がみたのと同じ月。西行が、定家がみたのと同じ月。
煌々と耀いて