はじめての大岡昇平

図書館に行ったら行ったでまたあれこれ借りてきてしまう。大好きな清水某氏のすすめに従い初めての大岡昇平。いきなり自伝に手を出すのは気が引けて、文庫がいいから『武蔵野夫人』を。
この人の日本語結構好きかも。それよりも、核心に早く近付きたいのに平静を装って淡々と運ぶ筆の動きがかえって面白い。
しかし間もなく淡々とした筆はとうとうと語りだす。その語りにはあきらかに悪意が潜んでいて読む者を脅かす。
順に違う人格がたち現れてはものがたりを繋いでいく。
大岡昇平に書くことを強いるその正体を突き止めるために、彼は自伝を、数年かけて、自らの何たるかを探すことになるようだ。
そうして突き止めたあとには何が残ったのだろう。